ご存知スコットランド出身のUMA(Undoubtedly Magnificent Animal)。吉祥寺The Wigtownに時折現れる。趣味は蒸溜所巡り。クラフトジン甲子園の応援イメージキャラクターに就任し、普段はSSRの出現率も大会期間中だけは出現率UP!
スコットランド出身のネッシーさんが、その流麗なボディをくねらせながら日本全国のクラフトジン製造所を巡るシリーズ。
番外編となる今回は故郷のスコットランドへ帰省したタイミングで、首都エジンバラにあるリンド・アンド・ライム蒸溜所を訪れました。
エジンバラのシティセンターからトラムで20分ほど。路面電車の車窓を流れる美しい街並みにうっとりしている間に、蒸溜所のあるエジンバラ北部の港町、リースに到着です。
どことなく潮の香りも漂ってくる感じにネッシーさんもそわそわしながら、町の中心部にある蒸溜所に突撃です。
中に入って受付を済ませると、ツアーの時間までショップを眺めて時間を潰します。
私が到着した頃はまだ他にお客さんはいなかったものの、ツアーの時間が迫るにつれてどんどんお客さんが増えていき、ツアー開始時刻には20名に迫る大きなパーティでのツアーとなりました。
参加のメンバーも日本(私)にスコットランド(ネッシーさん)を始め、アメリカ、ドイツ、イタリア、ギリシャにプエルトリコと、非常に多国籍な参加者たち。
エジンバラは観光でも人気の都市なので様々なエリアからのお客さんが来るのは理解できるのですが、じゃあ「エジンバラに来たからジンの蒸溜所に行こう!」という方がこんなに多いなんていうのには驚きましたね。クラフトジン人気が世界的なものであることを感じさせます。
ショップで参加者の確認と、希望するウェルカムドリンクの種類(ジントニックの他にジンジャーエール割りやソフトドリンクなんかも選べた)の確認を済ませると、ショップの奥にあるドアからいざ製造所の中へと入っていきます。
ガイドさんからそれぞれのウェルカムドリンクを手渡され、まずは蒸溜所の歴史やコンセプトを学ぶところからスタート。
時は大航海時代。港町であるリースにもたくさんの船が行き来しておりました。
そんな船乗りたちを当時悩ませていたのが壊血病と呼ばれる病気。
航海が長くなればなるほど体調不良を訴える船員は増え、当時原因不明だったその病気で多くの船員が命を落とすことになります。
その病気の原因を突き止めたのが、英国海軍軍医を務めていたジェームズ・リンド。彼は船員たちに様々な食事を摂らせ、その中で柑橘類を摂取させた船員たちからは壊血病の症状がでないことを突き止めると、それ以降積極的に柑橘類を摂るように指示、壊血病の犠牲者を減らすことに成功したのでした。
この辺りのお話なんていうのは、ジンの歴史に詳しいみなさまにとってはお馴染みのお話ですね。
イギリス海軍とジンの繋がりはいまさら語るまでもありませんが、当時海軍に支給されていたジンに、当時入手が容易だった柑橘類としてライムが加えられて、現在のジンライムというカクテルの原型が出来上がります。ジントニックもきっかけは「マラリア予防のため」と言われますから、ジンという酒の「薬」としての側面は非常に重要であったことが分かりますね。
その後、フレッシュライムは傷んでしまうという理由から、保存が容易な「ライムコーディアル」がローズ社によって開発され、これは後のカクテル文化の発展にも大きく寄与するわけなんですね。かの有名な「ジンとローズ社のライムコーディアルを半分ずつ。他には何も入れない」というやつですね。
そのように、ジンの歴史に大きな役割を果たした「リンド」氏の名前と、やはり重要な「ライム」の名を冠した「リンド・アンド・ライム」蒸溜所が目指すジンは、あくまでクラシカル。
ガイドさんも「最近は『ソルテッド・キャラメル・ジン』だとか『マシュマロ・キャンディ・ジン』だとか、すごいジンがいろいろ出てるけど、私たちがやっていることはとてもシンプルでクラシック。このエジンバラでかつて飲まれていたようなジンへのオマージュがあるのよ」と。かつての味わいを現代的にアップデートしたスタイルのジンだということですね。
歴史へのオマージュという姿勢は、その美しいボトルデザインにも反映されています。
かつてリースはガラス細工、ボトル製造が大きな産業だった時代があり、美しい装飾のなされた様々なグラスやボトルが製造されておりました。
リンド・アンド・ライム・ジンのボトルデザインは、その時代に尊敬と敬意を込めてデザインされているということです。美しいですね。
またこのパッケージにはプラスチック素材を一切使わないということで、その辺でもエコな意識の高さを感じさせますね。
たっぷり蒸溜所の歴史とコンセプトを伺った後は、実際の商品の案内へ。
ボタニカルが入ったグラスを一つ一つ参加者たちに手渡しながら、香りや味の説明を。
こちらで使用しているボタニカルは全部で7種。ジュニパー、コリアンダー、アンジェリカ、リコリス、オリス、ピンクペッパーにライムピールです。
商品コンセプトの通りクラシックな構成ですが、使用するボタニカルは全てオーガニック認証を受けているもの。クラシカルで、かつ現代的ということですね。
そしてライムピールを除く6種のボタニカルを、こちらも100%オーガニックのニュートラルスピリッツに16時間漬け込んでからいざ蒸溜となります。
スチルはいわゆるハイブリッド式。
ポットスチルとカラムスチルに、ボタニカルバスケットも付いてます。
1,000リッターというサイズのスチルにボタニカルを漬け込んだニュートラルスピリッツを投入。キーボタニカルとなるライムピールはバスケットの中に放り込まれ、こちらの香りだけはヴェイパーインフュージョン方式で取り出されます。
このプロセスでも彼らの環境への意識の高さは発揮されており、なんでもこのスチルを動かす電力は全て再生可能エネルギーのみでまかなっているんだそう。
蒸溜にかかる電力を100%再生可能エネルギーでまかない、
オーガニック認証を受けた原材料を100%使用し、
パッケージには100%プラスチック素材を使用しない。
これによって彼らは、環境に配慮した企業に与えられるB-Corp認証を獲得しています。
「美味しいものを造るだけではなく、環境も美しいままに保っていく」というのが彼らの一貫した考えです。これは、彼らがリースという港町の歴史をオマージュする意識とも繋がるもので、つまり「過去から得たインスピレーションを現代的に表現し、未来へとつないでいく」という一本の線の上にある考え方ですね。歴史から学び、未来へと残す。素晴らしいですね。
製造についてのガイドを受けた参加者たちは、ここで特別にボトリング体験もすることができます。
50mlのミニボトルを手渡され、一人一人専用の機械を使ってボトリング。ラベルとキャップシールを貼って完成です。いいお土産になりますね。
参加者みんながボトリングを終えたら、最後に蒸溜所の片隅に設けられたバーへ。
ここではリンド・アンド・ライム・ジンとライムジュースを混ぜて、ギムレットを作る体験ができます。
ガイドさんの案内に従いながら、ジンとライムジュース、お好みでシロップも加えて、ステアで仕上げるレシピです。
ジンの歴史と街の歴史を踏まえながら、現代的に洗練された商品を生み出し、それを未来へと繋いでいく。
蒸溜所のツアーでは、商品そのもののことだけではなく、コンセプトや歴史や環境への取り組みなどといったバックグラウンドについても深く知ることができるのがいいですね。
また彼らは「ポート・オブ・リース」という新しい蒸溜所も立ち上げ、そちらではウイスキーの製造も開始したということですので、そちらも楽しみですね。
ジンとライムとギムレット。
ストーリーを感じさせるツアー内容でとっても楽しめました。明るいうちから飲むにはちょっと、ギムレットには早すぎるとも思いましたがね。すごくいいツアーでした。
エジンバラ観光のルートに組み込むにはオススメの蒸溜所ですので、ぜひ行ってみてくださいませ!