新潟の里山が育んだクラフトジン 朝日酒造が造るKUBOTA GIN(クボタジン)のご紹介

新潟県長岡市。古くから越路(こしじ)と呼ばれるこの地域で、新たなクラフトジンが誕生しました。新潟の地酒『久保田』で知られる老舗の酒蔵「朝日酒造株式会社(以下:朝日酒造)」が造るジンは『KUBOTA GIN=クボタジン』と名付けられ、2024年秋に誕生しました。

1830(天保元)年に久保田屋を創業した朝日酒造は、国内有数規模の老舗の日本酒メーカーで、日本酒好きならずとも『久保田』という銘柄は知っているという方は多いのではないでしょうか。

日本酒は醸造酒のカテゴリーに入りますが、朝日酒造にとってスピリッツ=蒸留酒を造るという構想は4年前からありました。そしてついに2024年9月12日、「越路蒸留所(KOSHIJI DISTILLERY)」を竣工しスピリッツ造りに乗り出しました。

朝日酒造敷地内に建設された「越路蒸留所」

その第一弾として、とりわけ製法と表現の自由度が高いお酒のカテゴリーとして「ジン」を選び、この度、『KUBOTA GIN』を完成させました。

「里山」を感じるくつろぎと癒し

田んぼを久しく保つと書いて『久保田』。朝日酒造は、山、川、森、田んぼに囲まれた素晴らしい環境にあり、その「里山」の風景をイメージしてジン造りを行いました。

テーマは、自然による「くつろぎ」と「癒し」。ジンの洋酒らしさをしっかりと表現しつつも、日本の里山の中で育つボタニカルやハーブを中心に据え、日本人であればどこか懐かしさを感じるような仕上がりとなっています。

ひと口飲んだ瞬間に森の風景が脳裏に広がる様な変化に富んだ繊細な味わい。目にも鮮やかな新緑を感じさせながらも神秘的な佇まいのボトルやパッケージ。この目まぐるしい時代に生きる現代人の癒しになり、ゆったりとした時間を感じられるようなジンが完成しました。

KUBOTA GIN その素材と製法

KUBOTA GIN プロジェクトメンバー

KUBOTA GINには日本の里山の風景、酒蔵としての経験、地域との繋がりなどのフィロソフィーが存分に詰め込まれています。

それでは、その特徴をひとつひとつご紹介していきます。

風味付けに使用されているボタニカル

ジンというお酒は、ボタニカル(ハーブやスパイス、柑橘、フルーツなど)で風味付けをした蒸留酒であり、ジュニパーベリーが配合されていれば、どのようなボタニカルを使用しても良いという自由度の高いお酒です。

KUBOTA GIN の風味付けとして使用されているボタニカルは全16種類。里山で採れる草木のアロマが特徴的です。試作段階ではかなりの数のボタニカルを蒸留して実験を重ね、最終的に、里山の特徴を最大限に活かしながら、バランスが取れた16種類という構成に決定しました。

ボタニカルの多彩さによる複雑な香りやその変化。主に5月〜6月くらいの新緑の季節の移り変わりが表現されており、飲み進めていくにつれ、ゆっくりと時が経つような感覚を味わうことができます。

【 主なボタニカルと特徴 】

・ジュニパーベリー  :ジンとしての香りの主体で爽やかな香り

・コリアンダーシード :シトラスや枯草のようなジンらしい香り

・杉の葉、クロモジ  :里山の木々で感じるグリーンな香りやウッディーな香り

・笹の葉、ヨモギ   :里山の下草を思わせるグリーンな香り

・カモミール     :里山の花々を思わせるフローラルな香り

・アンジェリカルート、リコリスルート :里山の土っぽさをイメージ

・甘酒        :ほのかな甘み

・四川青山椒     :シトラスのような香りと辛みによるキレ

・シナモン      :甘くスパイシーな香り

・柚子        :シトラスの風味

・雪つばきの種、藪つばきの種 :オイリーな香味

・舞茸        :大地の生命感

日本の森に足を踏み入れた時のような新鮮な緑の芳香。口に含むと、ヨモギなどの里山の香りはさらに力強さを増し、同時に、舞茸や各種ルート(根)類が持つ土っぽさも感じます。それらを支える甘酒の柔らかい甘味も重要な役割をはたしています。そして、コリアンダーや青山椒のキレのあるスパイシーさが鼻に抜け、柚子の優しい柑橘も余韻を残します。

それらの風味は、口の中に含んで温度が変化することによって、その瞬間毎に表情を変えながらも絶妙なバランス感覚を持った余韻を残します。

里山のコミュニティーとのつながり

里山で採れるボタニカルの中でも、杉の葉、クロモジ、笹の葉、ヨモギなどは「UNE(ウネ)」という地域の団体によって里山で採取されます。

障がい者や高齢者、そして健常者や若者が共に農園芸作業を行い、持続可能な社会づくりに取り組んでいる団体であり、原料の調達を通じて酒蔵と地域との繋がりを大切にしています。

その他の新潟県産のボタニカルに焦点を当ててみると、舞茸もとても特徴的と言えるでしょう。舞茸といえば新潟県産が日本最大の生産地。大地の生命感を表現するボタニカルとして、舞茸という選択は新潟ならではと言えるでしょう。

そして、新潟県の県花である「雪椿」。そのオイリーさから、様々なボタニカルを繋ぎ合わせるまとめ役として非常に重要な役割を担っています。

酒蔵としてのこだわり

ボタニカルの他の素材にも酒蔵としての強みが存分に発揮されています。

やはり何と言っても仕込み水として使われている「水」。日本酒の仕込み水と同じく、創業地内を流れる清澄な地下水脈から汲むことのできる水が使用されています。その水は新潟県内でもとりわけ硬度が低く、朝日酒造が造る酒の清らかで凛とした味わいの源泉となっています。

そして水の他にも、ボタニカルとして使用されている「甘酒」が非常に特徴的です。朝日酒造は甘酒も製造・販売しており、その甘酒を蒸留することによってお米由来のほのかな甘みがジンに彩りを加えます。

そして、現在のジンに使われている素材という訳ではありませんが、将来的には、お米からスピリッツをつくりあげることも視野に入れており、日本酒以外での米の活用方法を模索しています。

長期的かつ持続的な地域とのつながりを深めることも大きな目的の一つで、ジンのベースとして使用することも視野に入れています。酒蔵が手がける「ライススピリッツ」をベースにしたジンが将来的に完成するのはとても楽しみですね。

飲み方のおすすめ

飲み方は、まずはストレートで時間を掛けて飲んで、ゆったりとした時間を感じるのが良いでしょう。次は氷に垂らしてロックスタイル。時間の変化と共に氷が解け出し、ジンが加水されていくことによって風味の変化を楽しむことが出来ます。

そして水割りもおすすめです。水で割っても薄いという印象は受けず、ボタニカルの風味もしっかりと感じられます。また、ソーダで割って飲むのもおすすめで、爽やかな口当たりが特徴で食中酒としても最適です。

口当たりはなめらかながら、日本酒『久保田』のキレも見事に表現されているKUBATA GIN。同社が長年取り組んできた、繊細な味の和食との相性の良さはジンになっても健在です。

KUBOTA GIN その繊細な製法

写真左から:製造エンジニア 田村 博康さん 中央:製造エンジニア・蒸留家 市川 絵梨さん 右:技術アドバイザー 鬼頭 英明さん

製法にも細部までこだわりが込められています。

製造・開発に携わったのは、朝日酒造の日本酒に使用されている酵母の開発もしており、酵母を含めた日本酒造りのスペシャリストの田村博康さん。そして、『久保田 こうじあまざけ』を始めとした朝日酒造の様々なお酒の開発にも携わった経験を持ち、蒸留技師として開発・製造に携わる市川絵梨さん。

そして、その2名が蒸留の研修に訪れた蒸留所「五島つばき蒸溜所」の蒸留家兼ブレンダーをつとめる鬼頭英明さんがアドバイザーとして携わっています。五島つばき蒸溜所が造る『GOTOGIN(ゴトジン)』はジャパニーズジンの中でも非常に人気の銘柄ですね。

田村さんと市川さんが五島つばき蒸溜所で様々なことを学び、その上で朝日酒造らしさは何かを突き詰めることによりKUBOTA GINは完成しました。

ジンに使用されている16種類のボタニカルは、全て個別に蒸留され最後にブレンドがされます。それぞれのボタニカルは素材ごとに欲しい香味が変わってきますので、里山を表現するのに必要な香味を取る為に個別に蒸留されているということですね。

各ボタニカルを蒸留する工程を16回。そして、数種類のボタニカルは1回の蒸留で2種類の蒸留液を取り分けているので、1本のジンが完成するまでに19種類の原酒をブレンドしています。

そんな気の遠くなるような手間がかかる工程を経て出来上がったボタニカル原酒を、長年の日本酒造りで培った経験と技術でブレンドし、ついにKUBOTA GINが完成します。手間がかかる製法ですが、それによって、KUBOTA GINが目指す繊細な香味の世界感が細部まで表現されています。

2基のハイブリッド蒸留器による香味の抽出

蒸留器

ボタニカルから風味を抽出する際に使用される蒸留器はハイブリッド蒸留器が2台。ハイブリッド蒸留器は様々な蒸留方法を実現できる現代的な蒸留器です。

ボタニカル毎にアルコールにボタニカルを浸して熱することにより風味を抽出する「浸漬法」や、ボタニカルに蒸気をくぐらすことによって繊細な香味を抽出する「バスケット法」を使い分けて、それぞれのボタニカルにとって里山を表現するのに必要な香味を抽出できる方法を採用しています。

そのハイブリッド蒸留機を2台設置することで、ボタニカルの個別蒸留を効率的に行うことができ、蒸留回数も増やせます。

神秘性を感じさせるボトルデザイン

ボトルデザイン

ボトルデザインにおいても、KUBOTA GINの持つ里山を感じさせるイメージが見事に表現されています。

ボトル前面にはシンプルに「KUBOTA GIN」の表記。そこから透けて見えるのが、裏ラベルの液面側に描かれている美しい緑色の景色。そしてそれは、見る人や見る場面によって印象が違って見えるよう設計・デザインされており、”どこか懐かしい記憶の中の風景” に引き込まれるようなものです。

ボトルのガラス素材も美しいフォルムを持っています。ジンらしいシルエットを保ちながら、表面には波のような加工が施されており、見る角度によってラベルデザインが揺らめく様子が楽しめ、まさに季節の移ろいを感じさせるデザインです。

このボトルは大阪の酒井硝子株式会社が製造しています。長年培われた伝統的な職人技による温かみと、工業製品としての厳格な品質管理が融合し、他のジンとは一線を画す独特な風合いのボトルに仕上がっています。

全体として神秘的なデザインで、自然への畏敬の念も感じさせるような仕上がりです。

最後に

『KUBOTA GIN』は、朝日酒造の伝統と革新が融合した、日本の里山を感じさせる特別なジンとして完成しました。

その製法には長年培った日本酒造りのノウハウと最新の技術が取り入れられ、地域のコミュニティと連携し、地元の素材を活かすことで地域社会との繋がりを大切にする朝日酒造の想いが詰まっています。日本の自然と文化を取り入れた新しいスピリッツのかたちとして、多くの人々に愛されるジンとなることでしょう。

KUBOTA GINは、朝日酒造オンラインショップで12月頃から発売開始予定です。ぜひ購入してみて、グラスを傾けながらゆったりとした時間を感じてみてはいかがでしょうか。

KUBOTA GIN 公式ホームページ:https://www.asahi-shuzo.co.jp/gin/kubotagin/