ご存知スコットランド出身のUMA(Undoubtedly Magnificent Animal)。吉祥寺The Wigtownに時折現れる。趣味は蒸溜所巡り。あなたがネス湖をのぞき込むとき、ネッシーさんもまた、あなたをのぞき込んでいるのだ
スコットランド出身のネッシーさんがエレガンな色気を撒き散らしながら国内のクラフトジン製造所を巡るシリーズ。
番外編となる今回は、オリジナルのジンを造るために長野県野沢温泉蒸留所に再訪しました。
ネッシーさんにとっては2023年の3月に訪問して以来二度目の野沢温泉。【参考:前回の記事】
しかし今回は、見学のために訪れた前回とは違う目的を胸に抱いての訪問となります。そう。オリジナルのネッシーズジンの製造です!
説明しよう!今回の企画の趣旨とは!
毎年11月30日は、ネッシーさんの出身地であるスコットランドのナショナルデー「セントアンドリュースデー」です。
スコットランドの守護聖人である聖アンデレの殉教日であり、スコットランドでは祝日となっております。
神楽坂「ザ・ロイヤルスコッツマン」、関内「ワイバーン」、そして吉祥寺「ザ・ウィグタウン」という首都圏にあるスコティッシュパブ三店舗により、日本国内でのスコットランド文化の認識向上のために「セントアンドリュースデー」イベントがスタートしたのが2018年。
2020年にはオリジナルビールである「ネッシーズビター」が『スコットランドのパブで飲まれているような、100年飲み継がれるようなエールを』というコンセプトのもとに誕生し、毎年この時期だけの限定醸造品として好評を博しているわけなんですがね。
今年2024年。よりスコットランドを知ってもらうために、ネッシーさんが向かった次なるアイテムはクラフトジン!
ネッシーさんの故郷であるスコットランドを感じてもらうためのジンを製造するため、ネッシーさん一向は野沢温泉蒸留所へ向かった。。
というわけなんですね。
今回、オリジナルジンの製造を引き受けてくれたのは長野県にある野沢温泉蒸留所。蒸溜責任者であるサムさんは、スコットランドと日本、両方のバックグラウンドを持つ方で、ネッシーさんが伝えるイメージを具現化していただくにはぴったりの方です。
三店舗の代表とサムさんとで「ネッシーズジン」のコンセプトをチャットで共有しながらいくつかのサンプルを製造。ズームミーティングでの意見交換を経てレシピを構築して、出来上がったレシピをもとにいざ製造!するために蒸留所までやってきたわけなんですね。わくわくしますね。
蒸留所に到着したのは夕方16時ごろ。
翌朝の蒸溜開始時間から逆算してボタニカルの漬け込み時間を調整するため、この時間からの作業になります。
ボタニカルによっては浸漬時間を長めに必要とするものもあるため、そうしたボタニカルは事前にベーススピリッツに漬け込んでおいてもらっております。
ネッシーズジンの特徴的な使用ボタニカルの一つは「ラズベリー」と「ブルーベリー」。どちらもフレッシュな状態のものを使用するのですが、水分量の多いフルーツは香味を取り出すのが難しいもの。他のボタニカルよりも一週間早めに漬け込みを開始してじっくりと香味を移しておきます。
それ以外のボタニカルは、事前に決定したレシピに従って計量していきます。
ネッシーズジンの特徴的な使用ボタニカルその2は「カモミール」と「スイスミント」。こちらの2種類は、地元長野県の飯綱産のものを使用しております。
ネッシーズジンには全てで12種類のボタニカルが使用されております。
それぞれのボタニカルを計量したものがこちら。
ボタニカルを全てスチルに張り込んだスピリッツの中に漬け込んだら、この日の作業は終了。
明日まで漬け込んで香りをスピリッツに移してから蒸溜作業となります。
無事初日の作業を終え、お蕎麦食べたり、お酒飲んだり、温泉に入ったりしてこの日はおしまい。野沢温泉の夜はにぎやかに過ぎてゆきます。
クラフトジン職人の朝は早い。
宿で最高な朝ご飯を食べたら、早速蒸溜所へと向かいます。
時刻は朝の9時。
昨晩の作業が17時半終了だったことを考えると、15時間半は漬け込んだということになりますね。
蒸溜前の香りを存分に楽しんだところでスチルのスイッチをオン!
最初の蒸溜液が流れ出すまでしばし待ちます。
スイッチをオン!してから最初の蒸溜液が流れ出すまでには1時間くらいはかかるとのこと。
なんでも、こちらのスチルはオーストラリア製。本来は240Vまで使用することができるということですが、日本国内だと100Vまでしか使えないですからね。電圧の関係で時間がかかるとのこと。仕方ないね。
しばしお話をしながら待つこと1時間ほど。ついに最初の蒸溜液が流れ始めます。
ここからは時間との勝負。
蒸溜液は最初(ヘッド)と最後(テール)をカットして、真ん中の一番美味しいところ(ハート)だけを取り出すのですが、最初の蒸溜液が流れ始めてから最初のヘッドをカットするポイントまでは、わずか2~3分の間に訪れます。
15秒~20秒ごとに次から次へとサンプルを取り、そのわずかな差を香りで判断していきます。
私も香りを試させてもらいましたが、変化しているのは分かるものの、カットの判断はとても難しく、職人技という印象を受けましたね。
無事最初のカットポイントを見極めたら、しばらくはハートの蒸溜液が集まるのを待ちます。
次のカットポイントまで2時間強はかかるということで、その間に蒸留所内を見学させていただいたり、お昼ご飯を食べに行ったり、温泉に入ったりして過ごします。
そうこうしている間にテールをカットする時間がやってまいります。
蒸溜液は、最初の方が度数が高く、後になればなるほど度数が低く、また香りもネガティブな要素が混じってきます。
ここでも最終的なカットポイントを決めるのは職人の鼻。
細かくサンプルを取りながら「まだ大丈夫」「まだまだ」「ちょっと(嫌な香りが)出てきたかな〜」「ここで切っちゃいましょう」みたいな感じで、手早い作業と判断が求められます。
サムさん曰く「テールに近付くとちょっとソーピー(石鹸ぽい)な香りが出てくる」とのことだったのですが、私も鼻をくんくんさせながら「これが。。ソーピー。。?」みたいな気持ちでした。やはり職人技ですね。
最後のカットも終了したらあとは残りのテールを蒸溜しきって作業は終了です。
蒸溜したばかりのジンの度数は、80度程度ととても高いです。
これを数日かけて60度、50度、そしてボトリングの度数へと落としていきます。
徐々に加水することでアルコールと水が綺麗に混ざり、また濁りにくくもなるそうです。
バランスを見ながら最適な度数へと調整をしていき、ボトリング、ラベリングを経て、ついに完成です!
ネッシーさんの故郷である、スコットランド、ハイランド地方を流れる風のような爽やかさと、豊かな水を湛えるネス湖のようにリッチなボディは、ストレートでそのまま飲むのはもちろん、ソーダ割やトニック割でも楽しめます。
ラベルには、写真家の加藤秀さんが撮影したネス湖の写真を使用しております。
美しく広がる湖面には、なにやら影が蠢いているようにも見えますね。
写真のように美しい風景の広がるハイランドの空気を想像しながら、乾杯するなんていうのは最高ですね。
ぜひ、11月30日のスコットランドの祝日「セントアンドリュースデー」を、こちらのネッシーズジンと共にお祝いしましょう!
それではみなさま、Happy St.Andrew’s Day!!