ウイスキーやジンのボトルをよく見てみると見かけることのある「ノンチルフィルタード(Non-chill filtered)」という言葉。短縮して「ノンチル」とも呼ばれる製法ですが、どの様な意味なのか疑問に思われた方もいるのではないでしょうか。
通常の製法のものよりも数は少ないとはいえ熱烈なファンも存在することも確かで、その銘柄数は増え続けています。
今回の記事では、そんなノンチルフィルタードという製法に関してご説明していきます。
ノンチルフィルタード=冷却ろ過をしていない
ウイスキーやジンに限らず、多くの蒸留酒(スピリッツ)は、蒸留後に冷却してろ過をするという工程が用いられます。
ウイスキーに関して言えば、樽熟成が終わった後に-8℃~5℃くらいの間の温度まで「冷却」して、フィルターを通して不純物を取り除く「ろ過」の行程があるのが一般的です。
ジンの場合には、多くの銘柄が熟成期間を設けてないので、一定温度まで冷却された後にろ過がなされます。
冷却ろ過の工程のことを「チルフィルタリング」と呼び、その工程を経たスピリッツを「チルフィルタード」。反対に、その行程を経ていないものが「ノンチルフィルタード(ノンチル)」と呼ばれます。
ウイスキーでは、ノンチルフィルタードの銘柄が割と多いのですが、ジンにおいてはまだまだ銘柄が少ないのが現状ですね。
ではなぜノンチルフィルタードを選ぶ作り手がいるのでしょうか?そのメリット・デメリットを比べて特徴を見ていきましょう。
ノンチルフィルタードのメリット
冷却ろ過を経ないスピリッツは、一定の低い温度下において、香味成分の一部が飽和状態になって個体として分離して、澱(おり)や白濁が生じます。
つまり、冷やすと白く濁るお酒ができるということになります。白濁されることを避けるために冷却ろ過をする訳ですね。
ウイスキーやジンには香味成分が含まれていますが、特にウイスキーに関しては樽熟成によって育まれた香味が特徴的であり、冷却ろ過をすることによって多少ながら香味が除去されてしまうということがあります。
冷却ろ過を経ないことによって香味成分が最大限に残されるので、スピリッツ本来の風味を余すところなく味わうことができるということが最大のメリットでしょう。
ノンチルフィルタードのデメリット
この製法の最大の弱点と言えば、お酒が「白濁」してしまうということでしょう。
ウイスキーにおいては、その透き通った琥珀色の美しさを鑑賞するのも愉しみの一つです。例えば氷の入ったグラスに注いでロックで飲もうとしても、白濁してしまうのはマイナスと考える方も当然いるでしょう。
ジンにおいては、トニックウォーターやソーダなどの冷えた割り材で割ることも多く、白濁したソーダ割を良しとしないということは考えられます。
見た目がカラフルなジンベースのカクテルにしても、ジン自体が白濁してしまうので、バーなどで提供される際に見映えという観点から避けられてしまうことも頷けます。
しかし、ノンチルフィルタードが美味いと感じファンになる人が多いのも事実。決して銘柄数は多くないのですが、ノンチルフィルタードを採用しているジンをご紹介します。
ノンチルフィルタードでつくられたジン 3選
COTSWOLDS DRY GIN : コッツウォルズ・ドライ・ジン
イギリス、ロンドンから北西100km程の距離にある町・コッツウォルズ。ハリーポッターのロケ地にもなっている田園風景が美しい町にコッツウォルズ蒸留所があります。
ここで作られているジンは、ラベンダーの華々しさが香りながらも、しっかりとドライな味わいがあり、国内外でも高く評価されています。コッツウォルズの美しい風景をイメージしながら飲めば、「白濁」というよりも「クラウディー」という形容詞がピッタリと当てはまるような、幻想的なジントニックを楽しめるでしょう。
THE MELBOURNE GIN COMPANY : メルボルン・ジン・カンパニー
オーストラリアワインの一大産地、メルボルン近郊にあるヤラ・バレーで作られているジンです。
メルボルン生まれのアンドリュー・マークスはワイナリーの一家に生まれ、一家のワインづくりを手伝う傍ら、ジンづくりにものめり込んでいったそうです。自身のワインブランドも持っており、クオリティーの高いワインとジンの両方を作れる多才な人ですね!
香水づくりの為にデザインされたという蒸留器を使用して、ハニーマートルやマカダミアナッツといったオーストラリア原産のボタニカルからデリケートに香味を抽出。その香り高さが素晴らしいジンです!
ARCTIC BLUR GIN:アークティック・ブルー・ジン
北欧の森林と湖に囲まれた小さな町、フィンランドのイロマンツィという場所で作られているジンです。
2人のフィンランド人による「北極圏の自然をボトルに詰め込もう」という思い付きから始まったジンづくりの試み。北欧の風景を思い起こさせる木々の香りと、北欧料理には欠かせないジャムの原料となるマルベリー(ブルーベリーの一種)などのベリーの風味がミックスされ、北欧の自然を感じられる圧倒的なクオリティーを誇るジンに仕上げられました。
最後に
ジンの世界ではまだまだ認知度の低い「ノンチルフィルタード」。白濁してしまう見た目ではありますが、ボタニカル本来の香味が凝縮した素晴らしい味わいのジンばかりです。
見かけることがあれば、ぜひ「クラウディー・ジントニック」を試してみてください!
ジンのつくりかたについての解説記事はこちら→ジンのつくりかた
Yaffee’s whisky blog : 冷却ろ過を行わないこだわり!ノンチルフィルタードでおすすめのウイスキー
たのしいお酒.jp : 「ノンチルフィルタード」のウイスキーに込められた造り手の想いとは?【ウイスキー用語集】
No.1 Fairham Gin : what is chill filtration in craft gin distilling?
COTSWOLDS DRY GIN official site
参考記事