ジンラバーさんが勧める「ブドウ」を使用したジンの世界。

ゲストライター
Gin Loverさん

どこにでもいるジンフリーク。 ベルギージン推しの甘党。宅飲みもBar巡りも大好き。ジンをストレートで飲む楽しさを日々布教中!Twitter

 
皆さんこんにちは。ゲストライターのジンラバです。

 私の記事ではフレーバーチャートに沿ってそれぞれの風味ではどんなジンがあるのか、同じ方向性のジンの中でもどういった違いがあるのかをご紹介しております。
 第三回となる今回はフレーバーチャートからちょっと寄り道しまして、「フルーティー」なジンの番外編をお送りします!
 注目するキーワードは「ブドウ」です。フルーティーなフレーバーを持つジンの最大勢力は、実は前回のボタニカルピックアップでご紹介したリンゴでもベリー系でもなくこのブドウなんです!
 なぜボタニカルではなくキーワードなのか。それはブドウという素材は実に多彩な形でクラフトジンに用いられているからです。
 シンプルなボタニカルとしてだけでなく、いちベーススピリッツにも留まらず、使われ方も使う部分も実に様々なブドウ系ジンの世界をお楽しみください!

 なお基本的にストレートで飲んだ時の印象を中心にご説明していますが、もちろんトニックやソーダで割る場合でも大きく逸れることはないと思いますのでご安心ください。

ブドウをベーススピリッツに使っているジン

ブドウをそのまま蒸留してベーススピリッツにしたもの

ジーヴァインフロレゾン

まずご紹介するこのジーヴァインフロレゾンは、おそらくブドウを使ったジンの中でトップクラスの知名度を誇るフランス産のジンです。
 ベーススピリッツに使われているのはフランスのコニャック地方産の白ブドウ。ユニ・ブランという品種です。
 ユニ・ブランは柑橘や青リンゴのような爽やかさが特徴的なブドウで、栽培面積がフランス最大となってます。ワイン以外にもコニャックやアルマニャックといったブランデーにもよく用いられる品種ですよ。
 さらにジーヴァインフロレゾンはこのユニ・ブランの実だけでなく花も浸漬、蒸留してベーススピリッツを作った上にユニ・ブランのエッセンスもキーボタニカルとして使用しています。
 とても柔らかく優しい味わいで、フローラルフルーティーな風味が全開なのでジン初心者にもオススメな一本。もちろんコアなジンマニアにも根強い人気があります。

ノエゾンジン

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 かつてはジーヴァインジンノエゾンとして販売されていたジンです。今でもジーヴァインであることに変わりはありませんが、ノエゾンジンとしてリニューアルされました。
 基本的にシリーズの代表的な一本だけを取り上げてきたのにこのジンだけは別に枠を設けて紹介しているのは何故か?
 それは大胆なリニューアルによってラインナップの一つではなく独立した一つの銘柄として扱うに相応しい変化を遂げたからです。
 ベーススピリッツがユニ・ブラン100%であることに変わりはないものの、ユニ・ブランのエッセンスは加えられておらず、代わりにこのジンにはサンダルウッドとベチパーがキーボタニカルとして使われています。
 これによりウッディでスパイシーなニュアンスが加わり、ブドウ由来のスムースさを保ちながらもドライな味わいが実現しています。

サザンクロス

 このジンのベースとなっているのは黒ブドウのピノタージュ、産地は南アフリカです。
 ピノタージュというブドウは南アフリカを代表する赤ワイン用のブドウで、スモーキーなニュアンスを持つ深みのある味をもたらすのが特徴となっています。
 そこへアフリカ産のボタニカル20種類と、アフリカ大陸最南端のアガラス岬の海水を使ってこだわりにこだわり抜いて作られた一本です。
 ピノタージュの唯一無二性とソフトでアロマティックなフルーティー香、シトラスみで人気のジンですが今は入手が困難となっています。実に残念。バーで探してみましょう。

ノルデス

 飲む香水とも言われるくらい香り高いスペイン産のジンです。最近さらにブドウを使ったジンが増えつつありますが、こちらは以前から知られているブドウ系ジンの古典的傑作な一本ですよ。
 ベースに使われているのはスペインを代表する高貴な品種のアルバリーニョ。海の影響を多分に受けた味わいが特徴で、ほのかな塩味のようなミネラル感とフレッシュな酸味を持ち合わせています。
 圧倒的に豊潤なこのノルデスの風味は、フルーティーやフローラルというよりもはやパフューミーという表現が的確なレベルです。
 香水のようと評されるジンの中でも特に爆発的に強い風味で、中には若干苦手とする人もいるほどです。ただ基本的にはブドウ系らしい柔らかなテイストであることに変わりはなく、やや甘口でストレートでもとっつきやすいので、苦手意識を持たずに是非とも一度は試していただきたいジンですね。

ソディス

リカーズハセガワ本店
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 M.シャプティエという有名なワインメーカーが作っている、ベーススピリッツからボタニカルまで全てがフランス産のジンです。
 ボタニカルとしてカモミールなども使用しており、繊細かつ爽やかな花の香りがブドウ由来の滑らかさと相性抜群なジンです。
 残念ながら使われているブドウの品種は不明でした。ジンという酒はこのように情報不足となる部分も多いため、往々にして想像を巡らせながら飲むことになります。ですが、そうして想いを馳せながら楽しめるのもジンの素晴らしい点だと私は思っています。

BCN

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 スペインはカタルーニャ地方バルセロナ産のジンです。使われているブドウはスペインワインの名産地であるプリオラートからのもの。
 残念ながらこちらもブドウの品種までは不明。ただし産地からある程度絞り込むことはできそうです。
 プリオラートで栽培されているブドウは約90%が黒ブドウで、そのうち40%ほどがガルナッチャ、25%近くがカリニャンのようです。
 他のボタニカルもプリオラート山脈で採れたジュニパーだったり、水もミネラル分の多いプリオラートの天然水なことからも地元の素材を活かしたジンであると感じます。
 ボタニカルとしてはローズマリーのハーバルさやレモンピールの柑橘香の他、イチジクもキーボタニカルとして主張が強めに感じられますね。

ジェラス

 アルマニャックの生産者が作るフランス産のジンで、ベーススピリッツのブドウもアルマニャックに使われているものと同じくユニ・ブランです。
 ジーヴァインにも使われているこのユニ・ブランですが向こうはコニャック地方産なのに対してこちらはアルマニャック地方産。ワインで言えばテロワールの違いが現れる部分になりますね。
 使われているボタニカルはピレネー山脈で採れたジュニパーやオリーブなど。その他に特徴として古樽で数ヶ月熟成されています。
 とはいえ樽香は色づかない程度に控えめかつアルコール度数も38%と低いので、トニックやソーダで割ったりして気軽に飲むのにも向いている一本です。

エリジール

 こちらはイタリア産のジンで金箔入りという非常に珍しいジンになります。
 ボトルを傾けると液体の中の金箔が舞い上がりとても美しく幻想的。このユニークなジンはイタリアの著名な女性金細工職人によって手掛けられました。
 ベーススピリッツはブドウ100%なこと以外は詳細不明。ただしボタニカルはトスカーナ産のシリアルなどこだわりを感じる10種類が組み合わされています。

アデレードヒル78

 オーストラリアのアデレードヒルズ地区で作られているジンで、ベースはグレープスピリッツとだけ表記されており品種は不明。
 オーストラリアの主要品種はなんといっても黒ブドウのシラーズですが、アデレードヒルズで最も多く植えられているのは白ブドウのソーヴィニヨン・ブランになります。
 ソーヴィニヨン・ブランは爽やかな柑橘香に加えて気候によって風味が大きく変わるのが特徴で、アデレードヒルズではさらにトロピカルフルーツのような香りと清涼な酸味が現れます。
 ボタニカルは12種類使われており、繊細なフローラル感に加えてスパイシーなニュアンスも感じられるジンです。
 デザートストレングスというラインナップもあって、コーヒーやタフィーなどの香りがする自家製ワトルシードを使用しており、通常品よりクッキリとしたスパイスとオレンジ系の柑橘の風味を感じられる一本となっています。

サンタマニア

 お次に紹介するはこのサンマタニア。聖なる熱狂という中々に心惹かれる意味のジンでスペインで作られています。
 ベーススピリッツに使われているのはテンプラニーリョというどこか美味しそうな名前の黒ブドウです。
 テンプラニーリョはスペインワインを代表する品種の一つであり、その特徴は豊富な酸と滑らかなタンニン。ワインに使用される時は長期熟成に向いているとされる品種です。
 使われているボタニカルはローズマリーやラズベリー、ピスタチオなど12種類でフルーティーかつハーバルな味わいとなっています。
 ブドウ系らしいフルーティーさとクラシカルなジンらしい風味とのバランスが優れているジンですね。

ブルテリア

 スペインの北西部、高級ワインの産地として知られるカスティーリャ・イ・レオン州サモラ県という土地で作られているジンがこのブルテリアです。
 ベースはテンプラニーリョ100%のグレープスピリッツ。テンプラニーリョという黒ブドウの特徴についてはサンタマニアの項をご参照ください。
 ラインナップとしてはアンジェリカやコリアンダーなどのクラシックなボタニカルを主体としたオーサーズと、マンゴーやカシスやパッションフルーツを使用したトロピカルの二つがあります。
 まだまだ日本に入ってきたばかりのジンであり、入手はおろか飲めるバーなどもそう見つからないとは思いますが、もしどこかで見かけたらこの記事を思い出してタイミングを逃さず飲んでみてくださいね。

一度ブドウで酒を作ってから再蒸留したもの

ソルジン

酒のケント 奥田商店
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 かの有名なフランスのボルドーにて作られているジンです。使われているブドウはアロマティックでハーバルなニュアンスを持つ白ブドウのソーヴィニヨン・ブラン
 一度ソーヴィニヨン・ブラン100%のワインを作ってからそれを蒸留、さらにボタニカルを加えて再蒸留という手順で作られています。
 キーボタニカルはスミレやブラックカラントの芽などで、柔らかかつ華やかなブドウ系ジンらしいフルーティーフローラルさを全力で感じられるジンです。ただし風味は派手すぎることなく、ジュニパーなど他の要素とのバランスもちゃんと取れた味わいです。
 さらにどっしりとした風味がお好みならば、オーク樽で6ヶ月熟成しタンニンを引き出したソルジンイエローもオススメ。
 他にもソルジンロゼやシャトー・ロッシュモランの赤ワイン樽で熟成した限定品などラインナップが豊富なことも特徴的な銘柄です。

ダンシングサンズ ソーヴィニヨンブラン


 ソーヴィニヨン・ブランを使ったワインを蒸留したジンをもう一本ご紹介します。このジンはダンシングサンズという銘柄のラインナップの一つとなっています。
 通常のダンシングサンズドライジンもとても美味しいのですが、このソーヴィニヨンブランはまさにイメージする通りのブドウらしい華やかさが非常によく表現されている一本です。
 他のジンとの大きな相違点としてはワインを減圧蒸留したスピリッツと、スタンダードであるダンシングサンズドライジンをブレンドしていることが挙げられます。
 出身国はニュージーランド、クラシカルなボタニカル以外に特徴的なものはマヌカやアーモンドですね。
 かつてのジンフェスティバルにも出品されていて、日本のジンブーム初期頃から存在していた有名なブドウ系ジンですよ。

ワインスティラリー

 こちらは黒ブドウのサンジョヴェーゼ100%のワインを蒸留して作られるイタリアのプレミアムジンです。
 ボタニカルも全てトスカーナ産のものが使われています。特にジュニパーベリーはトスカーナが主要産地の一つということもあり、ジュニパーを含む全てのボタニカルが同一産地という稀有なジンとなっています。
 2019年に発売されて即IWSC(インターナショナルワインアンドスピリッツコンペティション)で賞を取るなど、近年大注目のジンとなっておりジンラボでもその詳細な情報を取り上げていますよ。
複雑かつ華やかな風味が秀逸なジンで、他にもリコリスで甘みをつけサンジョヴェーゼ100%ワインの樽で熟成した珍しいオールド・トムもリリースされています。こちらも絶品ですので是非ともストレートで飲んでみていただきたい!

ジュリアン・メイエー

 お次はフランスはアルザスで作られているジンをご紹介します。このジュリアン・メイエーの最大の特徴は二種類のワインを蒸留してベーススピリッツを作っている点です。
 使われているブドウはシルヴァネールピノ・ブラン。シルヴァネールはアルザスの伝統的な品種の白ブドウで、軽やかな果実や柑橘とフレッシュで繊細なハーブのようなアロマが特徴となっています。
 ピノ・ブランはピノ・ノワールの突然変異種である白ブドウです。こちらもアルザスが主要産地であり原産地でもあります。アルザス地方では微かなスパイスとクリーミーでまろやかなワインになるそうです。
 これらのワイン蒸留ジンは、ブドウを直接蒸留するのではなく一度熟成させたワインを造ってから蒸留を行うことで、ベーススピリッツに更なる深みと厚みのある贅沢な味わいを生み出しています。

ナティボ

 三姉妹で白ワインやピスコを作っているチリのワイナリーから発売された珍しいジンです。
 ジンが完成するまでにとても手間がかかっており、まず自社畑の白ブドウを手摘みで収穫し無添加のワインを醸造。
 そのワインからピスコを製造して、さらにトウモロコシの蒸留酒とブレンドして再蒸留。そこへ地元で採れたハーブ類をボタニカルとして使用しているという具合です。
 ベースのピスコ及びワインに使われてるブドウは白ワイン用だけでなく食用にもなっているモスカテルです。
 日本でも有名なマスカットオブアレキサンドリアもこのモスカテルの一種で、ムスクや桃や洋梨のようなアロマティックで華やかな香りを放つのが特徴的ですね。
 キーボタニカルは標高1800mのアタカマ砂漠で採れたもの。ピンクペッパー、ニパ、ヤレータ、サルビア、モジェ、オレンジの葉などを使った100%チリ産となっています。

ブドウをボタニカルに使っているジン

ブドウの果肉を使用したもの

アルケミスト

輸入酒のかめや
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 満月の日にのみ蒸留されるというとても魅力的なストーリーを持つスペイン産のジンです。
 キーボタニカルとして使われているブドウは地中海沿岸で採れたマスカット。その他にもカモミールやオレンジピールなど合計21種類ものボタニカルを使用しています。
 フルーティーかつフローラルなのにしっかりとした骨格があり、初心者から上級者まで幅広く愛されているジンですね。
 特徴的な形のキャップや、かつて錬金術に使われていたアランビック蒸溜器による3回蒸溜、満月の日だけ作られるバックボーンなどブドウを使ったジンの中でもかなり有名な一本です。
 年12回しか蒸溜されないと考えるとなかなか日本まで入って来にくい印象を持ちますが、実は日本のジンブームが始まった頃にはもう広まっていて今では飲める場所も多いです。そのためジンをこれから飲み始めるという方に是非とも私がオススメしたい一本です。

マルコーニ46

リカータイム 楽天市場店
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 モスカートを使用してイタリアで作られているジンで、名前に冠するマルコーニ46とは生産しているポーリ蒸留所の所在地です。
 モスカートというのはマスカットの別名で、一般的にモスカートというとイタリアで栽培されているものを指します。ちなみにマスカットはフランスではミュスカ、スペインだとモスカテルと呼ばれています。
 生食や乾燥させてレーズンにもなる品種ですが、そういった甘いイメージに対してこのジンはあまり甘い方向性ではありません。
 濃厚なジュニパーの骨格にフレッシュなハーブで、フルーティーなタイプとは異なっています。ですがモスカート由来の柔らかな風味も確かに含まれており、華麗さにどっしりとしたコクがある感じのジンです。
 他のラインナップにマルコーニ42ジンがあります。こちらはアルコール度数42度が由来。ブドウこそ使われていませんがバジルやタイムが特徴的な爽やか系なので、ハーバルなジンの記事の方でいずれしっかりとご紹介しますのでお楽しみに。

道後ジン 六媛

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 日本にもブドウをボタニカルとして使ったジンはあります。産地はまさかの愛媛県。
 柑橘類のイメージが強いですが他にも魅力的な特産品はたくさんあり、地域の特徴を表現できる材料をセレクトしたそうです。
 使われているブドウは伊台・五明こうげんぶどうというブランドのニューピオーネ。巨峰のように大粒で糖度が高く香りもよいという、見た目も食味も生食向けに優れた品種です。
 ベースには特産のはだか麦を使った焼酎が使われています。ただし焼酎らしい味の主張は控えめなので誰でも飲みやすいタイプ。
 ボタニカルにはブドウ以外にもりんご、栗、いちご、梅が使われている大変にフルーティーなジンですよ。
 松山市の農水振興課も商品企画に携わっていてふるさと納税の返礼品にも選ばれており、まさしく県ぐるみで地元を盛り上げていこうと作られています。

ヒルビング マルベック

 アルゼンチン産のレアな一本で、日本に入って来たのも割とまだ新しいジンです。
 蒸留所があるのはアルゼンチンにおけるワイン産地の中心にあるメンドーサという場所で、数々の賞を受賞したクラフトジンを手がけています。
 使われているブドウの品種は名前にもある通りマルベック。ポリフェノールの含有率が高く、黒ワインと呼ばれるほど濃い色合いのワインになる品種です。
 しっかりとしたタンニンとややスパイシーなニュアンスがありますが、アルゼンチン産のものは少しタンニンの印象が柔らかく、スミレのような華やかな香りと滑らかな味わいになるそうです。
 そんなマルベックを使ったこのジンも繊細な花のような風味にしっかりとジュニパーが溶け込んでいて、軽やかさと飲みごたえのバランスがとても素晴らしいジンに仕上がっています。

UNITE O

 日本産のブドウを使用したジンをもう一本ご紹介します。キーボタニカルとなっているのはマスカット・オブ・アレキサンドリアです。生食用としても大変に人気のある品種ですね。
 岡山県で栽培されているマスカット・オブ・アレキサンドリアを使っているのですが、実は通常品ではなく歪な形やキズなどの理由で廃棄されてしまうものを有効活用しています。
 SDGsに着目したジンは日本でも広がっていますが、こちらも捨てられるはずだったブドウを再利用していて環境にも農家さんにも優しいジンですね。爽やかな清涼感でキレのあるサッパリとした味わいです。
 百貨店の天満屋が開発し販売しています。小規模なディスティラリーではなく企業や自治体が企画に携わるジンが日本でどんどん増えていますがこのジンもそんな一本。
 そういったタイプのジンは数量限定で情報が少ない事などもあり知名度が低いものも多いですが、近年どんどん増えて来ているので皆さんも注目してみてください。

ブドウの果皮などを使用したもの

アムリタ

 日本でブドウといえば山梨。そんな山梨県産のジンにはもちろんブドウを使ったものが存在します。それがこのアムリタジンです。
 使われているのはブドウの実ではなく花。品種までは不明ですが、日本で特に有名なものといえばやはり白ブドウの甲州が真っ先に浮かびますね。
 山梨県でも盛んに栽培されている甲州。味わい自体は穏やかで軽やかでスッキリとした感じのワインになり、後味に少し苦味や渋みが残るのが特徴的な品種です。
 ですが花を使うとブドウのそんな味わいがどう作用するのか、あらゆるものをボタニカルに使うジンだからこそ未知で面白い部分です。
 その他のボタニカルもほとんどが蒸留士の岸川さんがご自身で採取してきたものだそうです。様々なボタニカルをピックアップした限定品がかなりの数リリースされているのもこのジンの特徴となっています。
 実はこのジンについてはジンラボジャパンでも取材を行っており、より詳細な情報は是非ともこちらをご覧ください。

アストビサ

 スペイン北部のアラバ県産のジンです。スペイン国内で有名な女性醸造家が技術サポートをしているワイナリーが製造しています。
 ボタニカルとして使われているブドウの部位は今回ご紹介する中で最多の5種類。自社畑のブドウの芽、蔓、葉、実、花を使用しています。皮以外のほぼ全てを余すことなく使っていますね。
 品種は土着の白ブドウであるオンダラビ・スリを使用しているようです。このブドウを使ってチャコリというワインも作られています。
 さらにこのチャコリを発酵させる時の炭酸ガスから抽出したブドウの香りが凝縮した植物性アルコール物質もブレンドしているそうです。
 実はそのチャコリのアロマを添加しているのは蒸溜前なので、蒸留後には何も加えないというロンドン・ドライジンのスタイルで作られていますよ。
 他のボタニカルは畑に自生しているスピノサスモモ、ブラックベリーやスペアミントなど。そしてなんとジュニパーベリーはアヤラ峡谷に300年以上前から自生しているものを使っており、100%バスク産にこだわり抜かれた驚異的なジンに仕上がっています。

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 一方でこちらはブドウの果皮の部分を用いて作られる日本のジンになります。出身地は宮城県の秋保ワイナリーです。
 使われているのはメルローという品種。フランスボルドー原産の有名な黒ブドウですね。きめ細やかなタンニンが特徴的で、まろやかで口当たりの良いふくよかな果実味のあるワインになります。
 東北初のクラフトジン蒸留所が手がけた渾身のジンで、これまでに多くのコンペティションでゴールドメダルや最高賞をいくつも獲得しています。
 ジントニックに特化したテイストのジンであり、欅とトニックウォーターを1:3にすることで香りと味わいのピークが発揮されるように設計されていますよ。
 フレッシュな柚子のニュアンスや、セリと茶葉の爽やかな苦味を感じ取りやすいジンですが、メルロー由来の甘美な香味が素材をつなぐことで味わいに奥行きと厚みを与えているそうです。



アンアースストーリー

 廃棄素材を活用したクラフトジン作りで有名なエシカルスピリッツと、六や翠ジンで知られるサントリーによる日本のコラボジンです。
 使っているのは白ブドウ甲州の搾りかす。これはサントリーワインで用いたものです。甲州の特徴についてはアムリタの項をご参照ください。
 ブドウの搾りかすを使った酒というとマールやグラッパがありますが、まさかそのままボタニカルとして使用するジンが登場したのは驚きですね。
 その他のボタニカルとして鹿児島県の土着柑橘であるシークーなども使われており、甲州の持つ柑橘のような香りを引き出してアロマティックなジンに仕上げているそうです。
 ちなみにこのアンアースストーリーは#1とのことで、第2弾が出るのも待ち遠しく今から楽しみなところです。

ブドウをその他の方法で取り込んでいるジン


ブドウを他にはない形で添加したもの

フェルディナンズザール

えのき商店
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 ドイツワインの銘醸地モーゼルのザール地区にあるアバディス蒸留所がリリースするジンです。
 加えてブランドの販売代理店と地元トップワインメーカーの3社が共同でこのフェルディナンズザールブランドプロジェクトを立ち上げました。
 最大の特徴は蒸留後に高級白ワインを添加している事です。リースリングという白ブドウから作られているドイツワインの最高格付であるシュペトレーゼワインが用いられています。
 このリースリングという品種はドイツが世界の栽培面積の約6割を誇っています。2大産地の一つであるモーゼルのリースリングは軽めのボディに高い酸味が特徴であり、花やリンゴや洋梨のような果実味を持った繊細かつ透明な味わいです。
 33種類ものボタニカルを使った芳醇なフルーティさが堪らないジンで、ジンブーム初期から日本で知られていたブドウを使用したジンの中でも屈指の知名度を誇るブランドですよ。
 日本限定で販売されているオードヴィースタイルというラインナップもあり、そちらにはリースリングを蒸留したグレープスピリッツも30%使われています。さらに添加するワインもシュペトレーゼの更に上位であるアウスレーゼを使用した贅沢な一品となっています。



ジェネラス パープル

 香水のようなフローラルさで知られるフランス産ジンジェネラスのシリーズの一つです。
 ボタニカルとして使われているのは驚くべきことにブドウ由来のポリフェノールです。ポリフェノールとはほぼ全ての植物が持つ苦味や渋み、色素の成分のことで抗酸化作用を持っています。まさか成分がボタニカルになるとは。
 このポリフェノールの影響で液体自体がワインのようなルビー色に色づいている唯一無二の非常に珍しいジンですよ。
 味わいにも赤ワインのテクスチャーが色濃く反映されています。使われているブドウは残念ながら不明。おそらくは黒ブドウですがフランスは世界的なワイン産地なので絞り込むのも難しいですね。
 その他ボタニカルとしてピンクグレープフルーツやティムットペッパーが使われており、フレッシュで華やかな風味が特徴的です。



フォーピラーズ ブラッディシラーズ

 こちらはオーストラリア産のフォーピラーズというジンのラインナップの一つです。
 使われているのは黒ブドウのシラーズ。胡椒のようなスパイシーさが特徴的な飲みごたえのあるパワフルな品種です。ちなみにシラーズはオーストラリアでの呼び方で、フランスではシラーと呼ばれる品種です。
 このジンではそんなシラーズの実を丸ごとジンの入ったタンクに8週間漬け込んで、さらにブドウをプレスした後でドライジンとブレンドして仕上げています。
 このようにユニークな作り方をしているので、ブドウをボタニカルとして使ったジンの項目ではなくこちらで記す事にしました。ドライジンではなくオーストラリア版スロージンといったような具合になりますね。
 砂糖不使用でボトル1本につき約3キロものブドウを使った超濃厚な味わいです。ブドウの果実味だけでなくスパイシーなニュアンスやジンらしいジュニパーもしっかりと表現されている素晴らしい逸品です。

ブドウから作られた酒の樽で熟成したもの



季の美 天橋立

 ブドウから作る酒といえばなんと言ってもワインです。そんなワイン樽で熟成させたジンが日本にも存在しています。
 もはや言わずとも知れた世界に誇る日本のジン。京都蒸留所の季の美、その限定品である天橋立です。
 季の美は以前から樽熟ジンをいくつもリリースしてきましたが、こちらは何と日本のワイン樽を使っています。丹後半島の天橋立ワイナリー産のものですね。
 さらに京都産のネーブルオレンジをボタニカルとして使用しており、ジンもワインも柑橘も全てが京都で作られている極上の一本となっています。
 気になる風味としては樽感の厚みにフルーティーな滑らかさ、そして何より鮮烈なシトラスが香る素晴らしいジンです。

プロヒビジョン シラーズバレルエイジド

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 オーストラリアよりやってきた近年大注目のジンがこのプロヒビジョンです。今回ご紹介するのはこのジンのユニークなラインナップであるシラーズバレルエイジドです。
 バロッサバレーというワインの名産地で作られるシラーズワインに使用されていたワイン樽を熟成に用いています。
 シラーズはタンニンが豊富な品種であり、そのフルボディで濃厚な色調のワインが出来上がります。そのワイン樽を使うことでジンの色合いにもしっかりと反映されています。
 他のカスクエイジド系ジンと比べてもかなり赤みがかっていて、同じくワイン樽で熟成した季の美天橋立と比較しても明確な違いが分かりますよ。
 アルコール度数が59%と高いことに加えて、プロヒビジョン自体がどれもジュニパーの風味が強いどっしりとしたパワフルなジンとなっています。このシラーズバレルはそんな味わいにシルキーでフルーティーなコクが溶け合っている印象です。



ノエゾンジン レゼルバ

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 ブドウを使った醸造酒がワインなら蒸留酒の代表はブランデーではないでしょうか。このジンは先ほどご紹介したノエゾンジンをブランデー、それもジンに使われているブドウ品種と同じユニ・ブランから作ったコニャックの樽で熟成しています。
 熟成期間は残念ながら非公開ですが、ウイスキーなどに比べてジンの樽熟はかなり短めに行われることが多いです。
 多くのエイジドジンがカスクフィニッシュと言ってもいいくらいの短期間でもしっかりと樽の風味を反映しており、ジンそのもののバランスを崩さない程度の絶妙な調整が為されています。
 このノエゾンレゼルバもコニャック樽の甘い香りがプラスされることで複雑みのある熟成感が加わっています。コニャック樽で熟成したジンは非常に希少なので、もし出会う機会がありましたら一度は飲んでみてくださいね。

ロックローズ リザーブ

 イギリスはスコットランド北部の蒸留所よりリリースされているロックローズジンのスペシャルエディションです。
 熟成に使われているのはシェリー樽。シェリー樽というとペドロヒメネスを用いた甘い風味のあるウイスキーなどがよく聞くところですが、このジンに使われているのはオロロソという辛口シェリーの樽になります。
 カスク感は強すぎず弱すぎず、ナッツやドライフルーツのような微かなシェリー香とジュニパーの風味が融合して奥行きのある味わいに仕上がっていますよ。
 ごく少量のみの販売でジンバーでも置いてあるのは稀とは思いますが、とても珍しいシェリー樽熟成のジンなので是非ご紹介したいと思い最後に載せさせていただきました。

おわりに

 多種多様なブドウ系ジンの数々、いかがだったでしょうか。
 ブドウの種類、使用部位、使用方法の幅広さと共に、同じブドウというフルーティーさの中でも風味の幅広さを感じていただけましたか?
 こうして比べてみることで一部共通する点や相違点を改めて考えていただければ、これからのジン選びにもきっと役立つと思います。
 回を追うごとに少しずつ情報量を増やしてレベルアップしていってますので、私の記事で皆さんの気になるジンが一つでも見つかれば幸いです。
 次回は「シトラス」なフレーバーに着目してジンをご紹介していきます。
 フルーツ類でも今回まででご紹介しなかったレモンやグレープフルーツに、蜜柑といった和柑橘まで登場しますのでお楽しみに!