ピンクジンとは?ボタニカルによるバリエーションも紹介

ピンクジンサムネ

「ピンクジン」という言葉を聞いたことはありますか?ジン好きやバーテンダーであればピンとくる方も多いとは思いますが、ピンクジンという言葉が指すものには2種類のものがあります。

1つは「カクテル」の名前としてのピンクジン。伝統的に存在してるシンプルなつくりのカクテルです。そしてもう1つは、ジンのカテゴリーとしてのピンクジン。そのピンク色の鮮やかな色合いから近年非常に注目を集めているジンの一ジャンルです。

今回の記事では、まずカクテル名としてのピンクジンについて。以降は、カテゴリーとしてのピンクジンについて解説していきます。

カクテルとしてのピンクジン

カクテルとしてのPINK GIN

「ピンクジン」というカクテルは古典的なカクテルの一つで、ジンアンゴスチュラビターズ(ラムをベースとしてリンドウの根などの素材を漬け込んだ苦味酒)をミックスするといった、非常にシンプルな構成で出来上がります。

作り手によってレシピは様々ですが、シェイクしたり、ステアしたり、ロックスタイルにしたりと様々なバリエーションで作られます。また解釈は様々ですが「ジン&ビターズ」というカクテルとほぼ近いレシピとされます。

ちなみに、アンゴスチュラビターズは、1824年に南米ベネズエラの町「アンゴスチュラ」でドイツ人軍医によって開発されたことがその起源とされており、その後、イギリス海軍によって遠征に携帯されることとなりました。ジンとアンゴスチュラ・ビターズを混ぜて強壮剤として飲まれたのが「ピンクジン」の始まりとされています。

材料はジンと少量のアンゴスチュラビターズのみなので、ほぼジンのストレートを飲んでいるようなアルコール度数の高さで、飲み進める時には注意が必要ですね。

ジンのカテゴリーとしてのピンクジン

以降は、ジンのカテゴリーとしての「PINK GIN = ピンクジン」について解説していきます。

ピンクジンはシンプルにピンク色のジンのことを指します。一般的な製造方法としては、蒸留後のジンにピンク色のボタニカルを漬け込む(浸漬)ことによって、ジンに鮮やかなピンク色が付いて完成します。いわゆる「フレーバー・ジン」という大きいカテゴリーの中の一種ですが、フレーバー・ジンについてもっと知りたい方は下記リンクからご参照ください。

味については、一般的なドライジンよりもアロマティクで甘いフレーバーを持つ傾向があります。そして色合いが華やかなので、グラスに注いでジントニックやカクテルにすると写真写りも美しく、ジンの本場ヨーロッパにおいても若い女性から非常に人気があるとのことです。

日本ではまだまだ馴染みはありませんが、世界中のジンメーカーが製品のラインナップの一つに入れている程人気が高いカテゴリーになっていて、ここ10年程でその数が年々増えてきています。2021年には一年間の出荷量が前年比16%増になったとのことで、その成長度合いが伺えますね。

ピンクジン フレーバーのバリエーション

一口にピンク色に色付けされたジンと言っても決まった素材を使って色付けされている訳ではありません。ピンク色を持つボタニカルは様々な種類があり、どの素材が使われているかによって味わいも全く変わってきます。

単一のボタニカルを「キーボタニカル = 中心となるボタニカル」としてピンクジンに仕立て上げるものもあれば、色々なカテゴリーのボタニカルを組み合わせてピンク色を際立たせているものもあります。

ではざっくりとですが、それぞれのボタニカルの種類による分類と、おススメのピンクジンもご紹介していきます。

フローラル系

花びら」をジンに浸漬させることによって華やかさが香り立つジンが仕上がります。香水のようなアロマを持つジンも多く、香りでも非常に楽しめることでしょう。

特に見受けられるのが「バラ」が使用されたジンで、バラをキーボタニカルとしたジンは「ローズ・ジン」と名付けられたりもします。バラと「ラベンダー」の組み合わせも多く、その場合は紫色に近いピンク色がとても鮮やかに映える色になります。

他にも「サクラ」や「ハイビスカス」などを使用しているピンクジンもあったりと、フローラル系のピンクジンはバリエーションが多彩です。

フルーティー系

フルーツもピンクジンの素材として使用されます。

特に「ストロベリー」が使用されている銘柄は非常に多く、他のピンク色のボタニカルと合わせたピンクジンや、シンプルに「ストロベリージン」と名付けられたジンもピンクジンの一種と言えるでしょう。フルーツによってジンが甘く仕上げられることも特徴的ですね。

また「ピンクグレープフルーツ」や「ブラッドオレンジ」などの柑橘系もよく見受けられます。柑橘の甘酸っぱさを味わえるジンとして人気の銘柄も多いですね。そして「ブドウの皮」が使われているピンクジンもあり、そのロゼの様な色合いから見た目も美しい仕上がりとなります。

ベリー系

ピンクジンと言えばベリー系のボタニカルが使用されていることがかなり多いかもしれません。「レッドベリー」「ラズベリー」「ブルーベリー」「エルダーベリー」「レッドカラント(フサスグリ)」など、多種多様なベリーが使用されます。また、前述のストロベリーとの親和性も高く、ラズベリーと組み合わされることも多いですね。

フルーツ系とはまた違った甘酸っぱさが心地よく、ソーダで割るだけでも十分に甘みを感じられます。トニックウォーターを注いでラズベリーなどを浮かべれば、目に美しいジントニックを作ることもできるでしょう。

野菜

日本ではあまり馴染みがありませんが、海外で良く食べられる野菜である「ルバーブ」によってピンクに色付けられたジンもあります。ルバーブも他のボタニカルと組み合わされてピンクジンとなったり、キーボタニカルに使われ「ルバーブ・ジン」と名付けられるボトルもあります。

甘酸っぱい風味が特徴的で、割とベリー系の風味に近く、ヨーロッパでは伝統的にジャムの素材として使われている野菜なので、ベリーと感覚が似ていると言えるでしょう。

また珍しい例として、ロシア料理のボルシチの素材としてその鮮やかな赤が美しい「ビーツ」なども、ピンクジンのボタニカルとして使用しているブランドも存在します。

おすすめのピンクジン

Gordon’s Premium Pink Distilled Gin : ゴードン ピンクジン

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ジンの中でも伝統的な銘柄であり人気も非常に高い「ゴードンジン」。近年ではゴードンを始めとした他の大手ブランドについても、軒並みピンクジンやストロベリージンなどのジンをリリースしています。

ラズベリーとストロベリー、レッドカラントによってピンク色に仕上げられ、素材の持つ天然の甘みが特徴的です。ゴードンは1700年代から存在している歴史のあるメーカーですが、このピンクジンは1880年のオリジナルレシピにインスパイアされており、歴史の重みと同時に、現代のジンの多様性を感じさせるジンと言えるのではないでしょうか。

Pinkster Gin : ピンクスター ジン

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ジンの本場・イギリスで造られている正統派のピンクジン。植物を採取してリキュールのレシピを考案する人物であるスティーブン氏によってレシピが作られました。そのレシピを元に、1761年から続くイギリス最古のジン蒸留所・G&J Distillersによって製造されています。

5種類のボタニカルを蒸留後、ラズベリーなどを浸漬してできるシンプルな製造工程ですが、ドライでしっかりとした味わいとフルーティーさのバランスが良く取れた、ピンクジンのお手本のジンですね。

Salcombe Gin ‘Rose Sainte Marie’ : サルコムジン ロゼ・サントマリー

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サルコムジンは、“イギリスで最も魅力的な海沿いの観光地”と言われる港町・サルコムで造られている職人的な感性で造られているジンです。

「ロゼ」はフランス語で「ピンク」という意味で、「サントマリー」という名前はフランス南部の港町・マルセイユにあるサントマリー灯台からインスパイアされてます。マルセイユは、地中海沿岸の中継点として栄えた町ということで、地中海の素材をふんだんに使って贅沢に仕上げられたジンですね。

蒸気を通して風味を抽出するヴェイパー・インフュージョンによって、バラの花びらとラベンダーの繊細なアロマが抽出され、蒸留後のジンにストロベリーを漬け込むことによって美しいピンクに色付きます。繊細でありながらフレッシュなピンクジンを楽しみたいならこのジンがオススメです!

Malfy Gin Rosa : マルフィ ジン ローザ

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「ローザ」はイタリア語で「ピンク」という意味。

「マルフィ ジン」は、”地中海の楽園” と呼ばれるイタリア・アマルフィで造られています。地中海の太陽の恵みをたっぷり浴びた柑橘を素材とするジンが特徴的で、レモンフレーバーの「マルフィ・コン・リモーネ」は日本でも絶大な人気を誇る銘柄の一つですね。

マルフィにはいくつかのフレーバーがありますが、この「ローザ」は、ピンクグレープフルーツとルバーブによってピンクに色付けられています。柑橘由来の甘みと酸味が素晴らしい、フレッシュさがたっぷりのピンクジンですね。

Kyro Pink Gin : キュロ ピンクジン

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2010年前後からヨーロッパで広まったクラフトジンブーム。北欧での火付け役としていち早くフィンランドで蒸溜所を立ち上げ、クラフトスピリッツの流れを作り上げたのが「キュロ」です。フィンランドならではの「ライ麦」を素材としたスピリッツが特徴的で、そこに風味付けをするボタニカルについても、ベリーなどの北欧ならではといったものを使用しています。

フィンランドの名産である「リンゴンベリー」が浸漬されており、そこにストロベリーとルバーブで鮮やかなピンク色が付けられています。甘ったるくならない心地よい甘みと酸味のバランスが良く、ベリー系のピンクジンの一つのお手本のようなジンですね。

Maleficio Pink Gin : マレフィシオ・ピンクジン

ジンと言えば一昔前までは、ヨーロッパやアメリカをメインに造られていましたが、ここ数年で世界中のあらゆる地域から個性的なジンが生み出され始めてきました。南米も例外ではなく、アルゼンチン生まれの「マレフィシオ」も注目のブランドで、個性的なフレーバーのジンをいくつもリリースしています。

レッドフルーツやハイビスカスの花を浸漬させてピンク色に色付いたジンは、ヨーロッパで造られるジンとはまた違った魅力を持っています。他にも「ヒルビングジン」などといったアルゼンチンのメーカーもピンクジンを発売しており、南米のクラフトスピリッツのシーン

は、近年、非常に興味深く発展しています。

クラフトジン『9148』SAKURA

ピンクジンという名前ではありませんが、日本にもピンクに色付いたジンは存在しています。日本ならではのピンク色の花といえば「サクラ」が象徴的ですね。

北海道・札幌市の紅桜公園内にある「紅櫻蒸溜所」は、地域に根差したスピリッツメーカーであり、春になると季節限定のサクラのジンを発表します。ジンがほんのりピンクに色付いており、さらにサクラの花びらが浮かんでいるのも風情があっていい見た目にも華やかですね。お花見の季節などにはうってつけではないでしょうか!

参考リンク:

ALCOHOL PROFESSOR : What is Pink Gin & Which Ones Are Worth Drinking
[BBC : The secret history of Angostura Bitters](https://www.bbc.com/travel/article/20210512-the-secret-history-of-angostura-bitters#:~:text=Seigert created Bitters while he,his recipe was kept secret.)
Moonshine university : PINK GIN: WHAT IS IT?