お酒の世界には、その美味しさを引き立てるための様々な要素があります。その中でも、「ミキサー」が果たす役割は大きいと言えるでしょう。
ミキサーとはカクテルの「割り材」であり、お酒の味わいを引き立てる為に使用される炭酸飲料です。お酒を楽しむ際にベースとなるお酒にこだわることは大切ですが、ミキサーにも目を向けることは非常に重要ですね。
今回の記事では、ミキサーの中でも非常に人気が高いブランドである「フィーバーツリー」をご紹介していきます。
世界中でトップバーテンダーにも愛用されるミキサーのブランドであり、様々なバーで見かけることも多くご存じの方も多いのではないでしょうか。そして、割り材としてだけではなく、ソフトドリンクとしてもカジュアルに楽しめるクオリティーです。
フィーバーツリーは単なるミキサーの製造者ではありません。彼らは未来を見据え、革新的なアプローチでミキサーの常識を更新していきます。この記事では、そのアプローチや魅力を明らかにしていきます。
フィーバーツリーの歴史
フィーバーツリーは、世界中から厳選した植物由来の成分を使用したプレミアムミキサーであり、「ドリンクの3/4がミキサーであるならば、そこにも最上のこだわりを」という哲学を持って製造されています。
その歴史は、イギリスの飲料業界の別々の分野で働いていたチャールズ・ロールスとティム・ワリローという二人の若者が出会ったことから始まりました。
二人がフィーバーツリーのプロジェクトを開始したのは2003年。その頃の飲料業界では、スピリッツ = 蒸留酒の業界が非常に早い速度で発展しており、人々は多少価格が高くても惜し気も無く高い品質のお酒を楽しむようになっていました。
一方でミキサーの分野では、天然素材ではなく甘味料を使用して製造したようなコスト重視で品質の低い製品が市場を独占しており、二人はその点に疑念を抱いていました。
二人は「どんなにこだわったジンで作ったジントニックでも、その3/4はトニックウォーター。ならばそこにこだわるべきではないだろうか。」という思いを抱いていて、そこからトニックウォーターに関する妥協なき探求に乗り出し始めました。
まず第一段階として大英図書館に赴き、蔵書の歴史書から本格的な原料について何日間も調べ、その後、最高品質の素材を求めて全世界へ旅を始めます。
メキシコ、インド、アイボリーコーストなど、世界中の非常に危険な地域まで素材を求めて探求をしましたが、その中でも一番重要な目的地は、トニックウォーターの歴史の起源となる最高品質の「キナの木」が生育するコンゴ共和国でした。そのキナの成分とこだわりについては後ほど解説させてください。
それらの世界中から仕入れた素材を元に、天然由来の成分を使用した高品質なプレミアムトニックウォーターを作り上げる事に成功。フィーバーツリー社は2004年に創立され、最初の製品である「プレミアムトニックウォーター」が2005年に発売されます。
現在でもそのチャレンジングな姿勢は変わらず、トニックウォーターのみならず、フレーバートニック、ジンジャーエールなど、様々な種類のミキサーを日々生み出しています。
そもそもトニックウォーターとは
フィーバーツリーのトニックウォーターは、トニックウォーターの誕生の歴史と密接に関わっており、その背景を知れば知る程、二人の追い求めたミキサーのクオリティーが途方も無いものだということを実感することでしょう。
トニックウォーターの起源は「キニーネ」という物質を無くしては語ることは出来ません。キニーネは「キナ(学名 : Cinchona)」という植物の樹皮から抽出される物質で、マラリアの特効薬として用いられる抽出物です。
ジントニックと言えば、英国を含むヨーロッパ人が生み出したという歴史がありますが、トニックウォーターの素材となる「キナの木」は、実は、南北アメリカ大陸が原産です。17世紀以前には、キニーネは南米ペルーを含む南北アメリカ大陸で用いられていました。
17世紀後半になりキニーネは大西洋を渡ってヨーロッパにも輸入され、当時のイングランド王・チャールズⅡ世をマラリアから救った特効薬としても知られ、大変貴重な貿易品として扱われていました。
19世紀(1850年)になると、大英帝国を始めとしてヨーロッパのいくつかの国はペルー原産のキナの木の種をヨーロッパに持ち込み、キナの木を独自に育てることに成功します。
場所が変わりアジア諸国。大英帝国やオランダを始めとするヨーロッパ各国は、インドなどのアジア諸国に遠征し植民地化を進めていましたが、その遠征先で兵士達もまたマラリアの脅威にさらされていました。
そこで大英帝国はインドにおいて、またオランダはインドネシアにおいて、植民地でキナの木を栽培しマラリアの特効薬として使用することにしました。
キニーネには一点重大な問題点があり、それは「苦味」が非常に強く、そのままでは摂取するには苦すぎるということがあります。そこで、水と柑橘、砂糖を加えて用いられるようになり、このドリンクが「トニックウォーター」の起源となりました。さらに飲み口を軽くする為に炭酸も加えられ、現在のイメージのトニックウォーターが出来上がることとなります。
駐屯する兵士達はジンを常備しており、ジンとトニックウォーターをミックスして「ジントニック」にして飲むという習慣が定着するまでに時間はかからなかったということですね。
ブランド名「フィーバーツリー」の由来とキニーネへのこだわり
では「フィーバーツリー」に話を戻します。そもそもなぜ「フィーバーツリー 」というブランド名が付けられているか皆様ご存じでしょうか?
フィーバーツリーのトニックウォーターに使用されている「キニーネ」の成分は、コンゴ民主共和国にあるキナの木から抽出されるものであり、現地ではこのキナの木の愛称が「フィーバーツリー」と呼ばれているからに他なりません。
チャールズ氏とティム氏は、トニックウォーターについてその歴史的な背景を学ぶうちに、ペルーからヨーロッパに持ち込まれた原木の種を祖先とする、世界に唯一とされるキナの木を栽培する農園がコンゴ共和国に存在することを知り、実際に現地に赴き、ついにそのキニーネを調達することに成功します。
そこから採取できるキナの成分は非常に高品質なものであり、二人が目指した最高品質のトニックウォーターに取って無くてはならないものでした。
フィーバーツリー ここが他ブランドと違う
フィーバー・ツリーは、トニックウォーターを始めとして様々なミキサーが存在しますが、他のブランドと差別化されている特徴があります。
トニックウォーター キニーネの成分の有無
近年、世界中で様々なトニックウォーターが製造されていますが、キニーネの成分(日本ではキナ抽出成分と呼ばれるもの)が含有されていないブランドも数多く存在します。
トニックウォーターの重要な風味である「苦味」を他の苦味成分で代用をしている製品もありますが、フィーバーツリーの様に本来のキニーネの苦味を使用しているトニックウォーターは本格派であると言えるでしょう。
原材料へのこだわり
キニーネ以外の他の原材料についてもこだわりは並大抵のものではありません。ミキサーの製造過程において、入手が容易な香料からレシピを組み立てられることも一般的ですが、フィーバーツリーはそれを良しとはせず、世界の国々に足を運んで素材となる原料を調達しています。
それらは全て厳選された天然の素材で、イギリス産のエルダーフラワー、アイボリーコースト(コート・ジボワール)やインドに生育している数種類のジンジャー、メキシコ・ユカタン半島産のビターオレンジなど、多岐に渡るこだわりの素材を専門業者から調達しています。
そして、現地業者との直接取引を徹底するということにより、持続可能性も考慮されているという点が素晴らしいですね!
炭酸の泡がきめ細かい
フィーバー・ツリーは「炭酸の泡がきめ細かい」ということが特徴的です。
近年の日本では、強炭酸水が店頭に並んでいるのを見かけることも多く、炭酸が強めの飲料が生活に根付いてきたということは皆様も同意してもらえるかと思います。
それに対し、フィーバー・ツリーの泡はとても泡がきめ細かく、ミックスした際によりお酒本来の味を感じることができます。つまり、炭酸の強さとそこから生じる爽快感により一気に飲み進めるのではなく、最高の一杯を丁寧に飲み進めることができます。
そのようにお酒のポテンシャルを引き出すことや、ドリンクを飲む時間を価値ある瞬間にする点から見ても、「プレミアム」のミキサーであると言えるでしょう。
世界的評価も高い
フィーバーツリーのミキサーは現在では80ヵ国以上の国で販売され、世界的に愛され続けているブランドです。
ドリンクンの世界的なメディア「ドリンクス・インターナショナル」による、世界のトップバーテンダーを対象としたリサーチにおいても、「ベスト・セリング・ブランド」と「ベスト・トレンディング・ブランド」のナンバーワンに輝き、しかもそれが10年間もの間に渡って受賞しているとのことですので、その評価の高さには驚きしかありません!
世界的なトッププロからの評価も非常に高いブランドであるのはもちろん、ここ日本においても、フィーバーツリーのミキサーをレギュラーとして据えているバーも非常に多く見受けられ、国内外問わず、プロに愛されているということが窺えます。
商品ラインナップ
PREMIUM INDIAN TONIC WATER : プレミアム トニックウォーター
コンゴ民主共和国のキナ由来の優しい苦味と、メキシコのビターオレンジによる繊細で爽やかな香りが特徴のトニックウォーター。フィーバーツリーのフラッグシップであり、よりプレミアムなジントニックをつくるのに最適です。
MEDITERRANEAN TONIC WATER : メディタレーニアン トニックウォーター
コンゴ民主共和国のキナ由来の優しい苦味に、地中海沿岸で採取したレモンタイムやローズマリーのエッセンシャルオイルが香る、軽やかでフローラルな味わいのトニックウォーター。特にシトラスの効いたジンと好相性を発揮します。
ELDERFLOWER TONIC WATER : エルダーフラワー トニックウォーター
コンゴ民主共和国のキナ由来の優しい苦味成分と、手摘みで採取した英国産のエルダーフラワーから抽出したエッセンシャルオイルをブレンド。フルーティーかつ爽やかな味わいが特徴で、特に華やかなジンにぴったりのトニックウォーターです。
PREMIUM GINGER BEER : プレミアム ジンジャービア
世界中から厳選した3種のジンジャーの根を用い、24時間醸造することで燃えるような味わいを実現。個性豊かな香りと、刺激的で甘すぎず深みのある辛さは、よりプレミアムなモスコミュールをつくるのに最適です。(ビールではありません)
PREMIUM GINGER ALE : プレミアム ジンジャーエール
世界中から厳選した3種のジンジャーを用いた、上質で香り高いエッセンシャルオイルを独自にブレンド。爽快な辛さとコク、フレッシュな後味が特徴の本格的なジンジャーエールです。特にダークスピリッツとの組み合わせが抜群です。
PREMIUM SODA WATER : プレミアム ソーダウォーター
ミネラル分の少ない高品質の軟水を用いた繊細な香りと、口当たりのよさが特徴のソーダウォーター。ウイスキーやスピリッツの旨みを引き出し、より風味が際立つ味わいのカクテルへと仕上げます。
自分なりの一杯を
かつては素晴らしい味のカクテルを飲もうと思ったら、バーでプロのバーテンダーに提供される一杯を飲むということが一般的でした。しかし、プレミアムスピリッツが以前よりも身近な存在になった現在では、スピリッツとミキサーを自宅で準備すれば、特別な技術や器具も必要無く美味しい一杯を作ることができます。
もちろん、同じレシピでジントニックを作ったとしても、プロのバーテンダーの技術に裏付けされた一杯は素晴らしいものです。また、バーの素敵な空間で飲む一杯は格別でしょう。
それでもなお、フィーバーツリーの多彩なバリエーションから選んだ「To pair perfectly(最高の組み合わせ)」を自分で見つけた時の喜びは素晴らしいものです。自宅でもバーで提供される一杯でも構いません。ぜひフィーバーツリーの素晴らしさに触れ、自分にとって最高の一杯を探してみてはいかがでしょうか!!
参考書籍
FEVER TREE : EASY MIXING
参考リンク
フィーバーツリージャパン:公式サイト
フィーバーツリー(海外):公式サイト
公益財団法人 日本食品化学研究振興財団 : 既存添加物名簿
リカーページ:クラフトジンと相性抜群!トニックウォーター「フィーバーツリー」の魅力とは?
Youtube : フィーバーツリーの誕生、Fever-tree, How it all begins(日本語訳)