野沢温泉蒸留所 【ネッシーさんの!突撃!隣の!クラフトジン製造所! vol.004】

ゲストライター
ネッシーさん

ご存知スコットランド出身のUMA(Undoubtedly Magnificent Animal)。吉祥寺The Wigtownに時折現れる。趣味は蒸溜所巡り。100m4秒2。好きな音楽ジャンルはネスメタル

スコットランド出身のネッシーさんが、その光る眼で日本国内のクラフトジン製造所を見て回るシリーズ、第4弾は2022年末に正式オープンをしたばかりの新しい蒸留所、野沢温泉蒸留所です。

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ぴかぴかの建物に突撃前からこの表情です

東京駅から新幹線で2時間弱。そこから直通のバスを乗り継いで25分で、蒸留所のある長野県野沢温泉村に到着します。
こちらはその名の通り温泉はもちろんのこと、スキーやスノーボードといったウインタースポーツでも人気のエリア。

特に欧米を中心とした外国人観光客に人気のエリアで、インバウンドも復活している2023年3月ともなると、町の半分以上は海外の方といった印象でした。

実際に、これからお邪魔する野沢温泉蒸留所もオーナーはオーストラリアの方で、長く野沢温泉に住んでいらした方だということです。インターナショナルな雰囲気の町の様子に、ネッシーさんも得意げに「ハロー」など言いながら、蒸留所に突撃です。

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いざ

立派な扉をくぐるとまず飛び込んでくるのがこちら。

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ずらりと並ぶ樽。
その奥にはガラス張りの向こうにスチルが!

こちらは、今までこの企画で突撃してきた蒸留所の中で初めて、クラフトジンのみではなくウイスキーも製造している蒸留所。ずらりと並んでいる樽には、実際にこちらで製造したウイスキーの原酒が詰められているということです。もともとはウイスキーの方が専門であるネッシーさんも、この光景には目を輝かせておりましたね。

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目を輝かせるネッシーさん

元々缶詰工場だった建物を改装して利用している蒸留所。地元の杉材が多く使われたラック式の貯蔵スペースのやわらかな印象と、コンクリ打ちっ放しのインダストリアルな雰囲気が醸し出すムードは独特で、大変イケてますね。

そんなイケてる空間の中でもひときわ目を引くのがこちら。

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でかい金属の筒

こちらは缶詰工場時代の遺産。圧を加えながら缶詰を製造するのに使用されていたとのことで、現在では試飲スペースのカウンターとして利用されております。クールですね。

今回ご案内をしてくださる製造担当の方にご挨拶をすると、「まずはこちらを」と定番のアイテムを試飲させていただきます。

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3種のクラフトジン

左から、同社のシグネチャーとなる「NOZAWA GIN」、スパイシーでパンチのある「CLASSIC DRY GIN」、フルーティで柔らかな「IWAI GIN」、そして一番右手には仕込水でもある野沢温泉の湧き水です。
野沢温泉は標高1,650mの毛無山を頂点に周囲を山に囲まれたロケーションにあり、山々に降り注いだ雨や雪が長い年月をかけて地中に染み込み、それが湧き水という形で村のあちこちに湧いているとのこと。およそ50年をかけて磨かれた清澄な湧き水は、しっとりとしていてやわらか。全てのジンやウイスキーのベースとなる良質な軟水が、野沢温泉には豊富にあるんですね。

定番の3種は、それぞれ冬の雪山から豊かな大地、そして新緑の春をイメージしてレシピ開発がされたということ。スノーシーズンだけではない野沢温泉の魅力を詰め込んだジンと言えますね。
NOZAWA GIN」では地元産の杉やクロモジ、カキドオシといったウッディなボタニカルを、「CLASSIC DRY GIN」では日本を感じさせる山椒やシトラスを、そして「IWAI GIN」ではスモモや林檎の木、桜の葉などを使用して、それぞれ違った味わいを出しているということです。
その中でも、例えば共通して使用されるボタニカルである「レモンピール」も、イワイだけは「メイヤーレモン」のピールを使用しているとのことで、細かい調整が行われております。レシピ開発の苦労がしのばれますね。イワイでは林檎の「果実」ではなく「木」をボタニカルと使用しているのも面白いところだと感じました。曰く「そちらの方が綺麗な林檎の香りが出る」とのことで、なるほどーという感じですね。
また野沢温泉ということで、場所を象徴するボタニカルとして「野沢菜」もチャレンジしたとは仰ってましたが、どうしても美味しく仕上げるのが難しかったと。曰く「地元産のボタニカルを使用することは大切だけれど、それで美味しくなくなっちゃ元も子もない。バランスです」と。その通りですね。野沢菜は漬物が一番美味しい。みんな知ってるね。

3種のベースはどれもライススピリッツ。50度に薄めてボタニカルを浸漬させて火にかけ、一度の蒸留でバスケットにもくぐらせます。

(バスケット法について解説した記事はこちら→ヴェイパー・インフュージョンとは)

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ピカピカに磨き上げられたスチル。ドイツ、カール社製

2基あるポットスチルのうち、左手のスチルはウイスキー製造に使用する初留釜。ジン製造には再留釜である右手側のポットスチルと真ん中の連続式カラムスチルを使用します。そしてその左手にある背の低い円柱が、バスケットを仕込むためのボタニカルチャンバーというもので、単式で気化した液体がバスケットを通って、連続式を通って、コンデンサーを通って、液体に戻る、という流れですね。

ヘッドは極薄めにカットして、フェインツと合わせてタンクに保存。製造担当のスタッフさんは現在3名いらっしゃるということで、カットポイントも大体の指針こそあれ、最終的には味を見て決めるとのこと。カットポイント一つとっても3人の個性が出そうですね。
面白いなと思ったのはこれらのフェインツをどうするかということで、ウイスキーだと次回の蒸留に回すとか、クラフトジンだと廃棄しちゃうってところもあるわけなんですが、こちらは集めたフェインツを真ん中の連続式を使用して全部ニュートラルスピリッツに戻してしまい、それらを次回のジン製造に再利用する方法を取っていると。
しかもそれらのフェインツは、製造する商品ごとに分けられることなく、全部まとめて連続式で上げちゃうとのことで、そんなことしたら風味とか混ざっちゃうんじゃないの?という私の疑問に対し「ニュートラルにまで戻せば大丈夫です」と。これらニュートラルスピリッツに関する各メーカーの考え方は様々で、大変興味深いですね。

また、3種類もの定番商品に加えてさらにはウイスキーも造るとなると、製造スケジュールが大変なんじゃないかとお伺いすると「いまはまだ製造スケジュールもそんなにフィックスしていません。併設のショップの在庫を見て、シグネチャーが足りないと思ったらシグネチャーを仕込みますし、クラシックが足りないと思ったらクラシックを仕込みます」と仰っており、だいぶフレキシブルな印象を受けました。
また、写真に写っている1,000Lのポットスチルの他に、裏には80Lのナップスチルと呼ばれる小型スチルを持っており、かつてはこちらでジン製造を行なっていたとのこと。しかし小さいとそれだけたくさん動かさなくてはいけない。それは大変だというので、小型スチルは限定品やプロトタイプを製造する際に使用するにとどめて、現在では全て大きいポットスチルで行なっているとのことです。ウイスキー製造もポットスチルで行なっていることも考えると、スケジュール管理も大変そうですね。

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ぴかぴかのタンクも並んでいる

また、ウイスキー蒸留所としてはかなり特殊な設備として、マッシュフィルターの導入とハンマーミルの使用というのが挙げられます。蒸留所見学マニアのネッシーさんとしては、ある意味ここが一番の興奮ポイントでしたね。
これらの設備の導入による最大のメリットとしては「大麦以外の穀物に対応できる」ということが挙げられます。同蒸留所では、従来のスコッチ型モルトウイスキーの他に、コーンなどのグレーンや、ライウイスキーの製造なども行える設備を有しており、実際にポットスチルではなく、カラムスチルで造るグレーンウイスキーの計画もあるんだそう。そんなことを聞くと、やはりジンのベースとなるスピリッツも自社製造を行なったりするのかな、とも思いましたが、今のところその予定はないそうです。個人的には自社スピリッツをベースに使用しているなんて聞くとちょっとトキメク部分があるのですが、やはりなかなか難しいのかもしれませんね。

話はどんどんジンからウイスキーの話へ。
現在、ウイスキーの原酒は蒸留所内の貯蔵スペースに保管しておりますが、近くにウェアハウスを建設する計画もあるということです。ウイスキー製造はウェアハウスのスペース確保との戦いですね。

熟成に使用する樽も非常に多彩。基本的にはバーボンカスクを使用しているとのことですが、長野といえば日本のワイン王国。同県内のワイナリーで使用したワインカスクや、アメリカのクラフトディスティラリーで使用していたライカスク、果てはメープルカスクまで使用しているということで、果たしてどんなウイスキーになるのか楽しみですね。

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ずらりと並ぶ樽
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カスクナンバー001も
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LAB ROOM では
なんらかのラボが行われている
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BOTTLING ROOM では
おそらくボトリングが行われている
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手詰めの設備が見えます
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ラベリングの設備もですね

こちらの建物は製造設備と試飲スペース、貯蔵庫とショップが一体となっている構造で、大変イケてるデザインをしております。ピカピカの蒸留機を見ながら試飲をすれば味わいもひとしおですし、そんな感慨にふけりながらショップを見渡せば、そりゃあ色々とグッズを買ってしまいますよね。ボトルはもちろん、衣料品やタンブラー、果てはロゴ入りの温泉タオルなんかも販売しているなんていうのは、大変にニクいラインナップですね。雪山でスキーして、温泉で一汗流して、ジンやウイスキーを飲んだら、もうハッピーですよね。温泉まんぢうも食べましょう。野沢菜漬も食べましょう。

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ショップも充実

こちらの蒸留所は、ウイスキー製造もしているとあって設備の規模が、今までのクラフトジン製造所と比べると格段に大きい。それでも、例えば一昔前まで「スコットランド最小の蒸留所」と言われていたエドラダワーの初留釜のサイズが4,200L(再留釜は2,100L)であることを考えるとかなり小規模なもの。
そんな小規模な造りながら、最新の設備とユニークな設備を組み合わせて多種多様な原酒を生み出そうという姿勢はとても意欲的。特に、小規模ながらグレーンウイスキーの製造も計画しているというのには本当に驚かされましたね。びっくりです。

野沢温泉という美しい自然に魅了された、様々なバックグラウンドを持つ方々が集まってできたこちらの蒸留所。そんな方々が野沢温泉の魅力を込めて造ったクラフトジンは、これから日本国内のみならず、世界中にその魅力を発信していくのに十分なメディアだと感じました。

ぜひみなさんも一度お試しになって、気に入りましたら野沢温泉にも行ってみてくださいませ。一度行けばその魅力にハマること請け合いですよ。温泉はマジで熱かったですけどね!

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ネッシーさんもキメキメです
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Nozawa Onsen Distillery(野沢温泉蒸留所)

〒389-2502 長野県下高井郡野沢温泉村豊郷9394